プログラミングという仕事の原点

前に購入していたKindle本を漁っていたら、古川亨さんの「僕が伝えたかったこと、古川亨のパソコン秘史」という本が出てきました。どうやら2016年に購入していたのですが、あまり読んでいませんでした。

たまたま、それを見つけて目次を見てみるとアスキーの遠藤論さんが「“ギーク”にいちばん近い概念は“カワイイ”だと思う」という寄稿をしていて、そのタイトルに膝を打ったので、まずそれを読んでみました。

「昔、ビル・ゲイツに≪なんでプログラミングを始めたの?≫と聞いたら、彼は≪自分の母親の仕事を助けられるようなコンピュータを家庭に置きたかった≫と言った。身近にいる人がもうちょっと楽に、もうちょっと幸せに、という気持ち。それは僕らのこの仕事の原点だよね」

古川 享. 僕が伝えたかったこと、古川享のパソコン秘史 (NextPublishing) (p.153). . Kindle 版.

まず、目についたのはこれで、古川さんがビル・ゲイツに聞いたことを思い出して喋ったのを遠藤さんが聞いて、それを遠藤さんが文章にして古川さんの本に載せているという入り組んだ構造の一文なのだけど、遠藤さんは古川さんとビル・ゲイツのこの逸話のピュアさに言葉が詰まってしまったと。

で、それを読んだ私は少し大げさに言えば感動してしまったわけです。コンピュータを使うというか、コンピュータを便利に使うために私はプログラムを書く仕事をしていて(今は、プログラムを書くその前後の仕事も合わせてしているけれど…)、その究極の目的はこのビル・ゲイツの言葉にないといけないのではないか。それが母親だったり、奥さんだったりいろいろするのかもしれないけれど、自分の近くにいる自分の大切な人のことだよね。で、それを聞いた古川さんが「それは僕らのこの仕事の原点」と言っている。

もう10年以上も前のこと、このブログの過去の記事を漁るとそんなことがたくさん書いてあるけれど、SI業界でSEという仕事をずっとしていて、自分は何のために働いているのだろうと悩んで、その結果、僕たちの仕事には想像力が必要である!という結論を導き出したりもしました。SI業界は多くの場合、顧客企業が社内で使うシステムとかを構築するから、そのシステムを使っている実際の姿が直接見えなかったり、少なくともその人は自分の親とかではないし、そのシステムの恩恵を自分が受けるわけではないので、何がどうありがたいのかが分かりづらい。だから、そのシステムで誰かが便利になって、回りまわって親とか自分も便利になっているという想像力がないといけないという話。

(当時は想像力という理解で終わったけど、いま考えると必要なのはリベラルアーツというか、一般的な教養と社会の理解ではないかとも思っています。自分の興味があることだけじゃなくて、世の中一般の動きを広く理解し、いま世の中はどういう課題を抱えているとか、そういうことが必要だと思います。)

あと、何に役立っているかはさておき、自分を指名してくれて、自分のやった仕事でその人が喜んでくれるからそれで良いではないか!という比較的単純な理解もモチベーションにしたりとか、そういうことを考えたり、ここに書くということをしばらくやっていたわけですね。

でも、結局のところビル・ゲイツの言ったことこそが原点で、それは私の若き思いと共通する部分もあるけれでも、やっぱり大切にしたいことだと思うのです。

そんな私も40代になって、最近は当時よりも前線に近いところでのお仕事が増えているというか、基本的に個人で動いているから当時のようなコマではなくなったというのと、扱うシステムの規模が自分一人でだいたい理解できる範囲に収まっているので、それで効用感が出ているのかもしれませんが、以前のようにモチベーションで悩むことは少なくなったような気はします。

ただ、それでもやっぱり、自分が作っているもの、書いているもの、教えているもの、それぞれがやっぱりコンピュータに関係しているわけですが、それが身近な人、そして世の中にどういう影響が与えられているのか、もちろん好影響だと良いのですが、それを考えながら日々のお仕事をしていきたいと思っています。

この記事を書いた人

井上 研一

経済産業省推進資格ITコーディネータ/ITエンジニア。株式会社ビビンコ代表取締役。
北九州市出身、横浜市在住。AIやIoTに強いITコーディネータとして活動。北九州市主催のビジネスコンテスト「北九州でIoT」に応募したアイディアが入選し、メンバーと株式会社ビビンコを創業。著書に「初めてのWatson」、「ワトソンで体感する人工知能」など。日本全国でAI・IoTなどをテーマにしたセミナーや研修講師での登壇多数。