手離れの良い仕事

この間、まだ若手のITエンジニアから仕事の受け方についての相談を受けました。

彼はいずれ独立したいという思いがあるようだったので、私の経験を踏まえながら回答していたのですが、その中で彼の言葉に「手離れの良い仕事が好ましい」ということがあったのです。

それに対して、私は「手離れの良い仕事は、金離れの良い仕事」ということを言いました。手離れが良い仕事ということは、おそらくある程度の規模の開発案件を外部の人間として受けていて、導入後の運用はユーザー企業側でやってくれるから、すぐに現場を離れられるということでしょう。その後は、また次の手離れの良い仕事に就くことが前提でしょう。

手離れの良い仕事というのは、金離れの良い仕事です。だって、手離れたということは、そのお客さんとの関係が切れることを意味しているから。

もちろん、手離れを悪くするためにバグをいっぱい残しておくとか、そういうわけではありません。そうするとお客様の信頼を失うわけだから、結局は手離れてしまう。そうではなくて、開発案件では良い結果を残すのだけど、その案件で開発したシステムがお客様にとって重要で、利益に直結するようなものであれば、仕様変更・追加はどんどんあるわけだし、あるべきです。そうなれば、手離れは悪くなる。金離れも悪くなる。それは、お仕事が続くということです。お客様にとっても、こちらにとっても、快くお金のやり取りをするわけですから、良い関係です。

手離れの良い仕事を好むのは、基本的には大企業に勤める人の考え方ではないかと思います。先に書いたように、仕事の手離れが良い以上、次の手離れの良い仕事に就かないと生活が続きませんから。

ちょうど、地方でSaaS導入支援会社を起業して3年、階段から降りられなくなったという記事が話題になっていますが、これも新規営業をやめて既存のお客様との関係を重視するようになって、落ち着いたという話です。

手離れの悪い仕事は、金離れの悪い仕事。それは、お客様と深い関係を築き、じっくりとした仕事をしながら、安定した生活を得ていくということだと思います。だから、私はそういう仕事をしていきたいと思っています。独立や起業に憧れる人からは、キラキラとしているようには見えないかもしれないけれど。

そういえば、株式会社ビビンコはたまたまというか、北九州に作った会社です。この記事にあるほどの地方ではないかもしれませんが、IoTの会社であるという他に、存在意義があるのかもな…という気もしたりしました。少しだけど。

この記事を書いた人

井上 研一

経済産業省推進資格ITコーディネータ/ITエンジニア。株式会社ビビンコ代表取締役。
北九州市出身、横浜市在住。AIやIoTに強いITコーディネータとして活動。北九州市主催のビジネスコンテスト「北九州でIoT」に応募したアイディアが入選し、メンバーと株式会社ビビンコを創業。著書に「初めてのWatson」、「ワトソンで体感する人工知能」など。日本全国でAI・IoTなどをテーマにしたセミナーや研修講師での登壇多数。